高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第90回
世界最大規模のテクノロジー見本市CESで注目を浴びるエイジテック
1月上旬に米国・ラスベガスで世界最大規模のテクノロジー見本市、CESが開催されました。近年このイベントが報道されると、必ず「エイジテック」について問い合わせを受けます。
エイジテック(Age-tech)とは、2019年頃から米国で使われ始めた言葉で、高齢者の生活の質を改善する技術のことです。
CESでエイジテックが注目されるようになったのは、数年前から世界最大の高齢者NPO、AARP(エイ・エイ・アール・ピー)が出展するようになったためです。
日本企業のエイジテック製品が好評を博する
今年はいくつかの日本企業も出展して注目を集めていました。
キリンは、明治大学と共同開発した減塩スプーン「エレキソルト」を出展。電気味覚技術を活用し、塩味を1.5倍に拡大するもので、CES 2025でイノベーションアワードを2つ受賞。軽量で、約2万円という手頃な価格で提供可能な点が受けていました。
旭化成エレクトロニクスは、排尿を検知して知らせる「スマートおむつ」を出展。オムツに縫い付けた導電性素材が尿を電解液として発電し、ブルートゥース(近距離無線通信)で接続した電子端末に排尿を通知します。オムツ側に電池がいらない点がミソです。
日本はエイジテックの先進国 世界をリードできる分野
実は日本はエイジテックの先進国です。
上記は最近の例ですが、累計2,500万台以上売れたNTTドコモ「らくらくホン」、象印「見守りホットライン」、知能システム「パロ」、チカク「まごチャンネル」など、エイジテックという言葉が出てくる20年以上前から「高齢者の生活の質を改善する技術を活用した製品」が数多く生み出されています。
日本のメディアは、CES発の情報だと米国トレンドとして取り上げがちです。しかし、エイジテックに関しては、日本での経験・実績が豊富なことに目を向けるべきです。
一方、日本企業は、エイジテックも含めた高齢者向け製品・サービスが世界をリードできる分野だと認識し、高齢化が進む海外市場へ事業をさらに展開するべきでしょう。