高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第36回
ITを使いこなせない高齢者はまだ沢山いる
緊急事態宣言が解除されても「新しい生活様式」が求められています。感染防止のために人との接触をなるべく避けるためです。
外出自粛要請で人との接触なしで人と交流する手段としてZoomなどのネットによるテレビ会議システムが急速に普及しました。
しかし、これらの仕組みはパソコンやネットに疎い多くのシニア層にとって敷居が高いようです。テレビ会議なのに、なぜ普通のテレビでできないのか―――こんな質問が私のもとに寄せられます。
ITに疎い人でもテレビで楽に使える「まごチャンネル」
そんなITに疎い方でも家庭のテレビで楽に使えるコミュニケーション手段が、スタートアップのチカク(東京・渋谷)が提供する「まごチャンネル」です。
このサービスでは「家」の形をした専用端末を自宅の大画面テレビとケーブルでつなぐだけで遠く離れた孫や子供の様子を見ることができます。端末にはSIMカードを内蔵しておりネット環境がなくても通信できます。
孫と住む子供がスマホの専用アプリで送る動画や写真が、遠くに住む父母のもとに届くと、「家」の窓ランプが点灯して、まるで父母の家に孫が帰省してきたような感覚です。父母はテレビの電源を入れ「まごチャンネル」を選ぶと送られてきた動画や写真を見ることができます。
「孫が目の前にいるみたい」「こんなに話すようになったんだ」—利用者の多くは「スマホでも孫の動画は共有できたが、テレビの大画面で見ると感動する。まるで孫が目の前にいるようで、つい話しかけてしまう」と言います。シニア層にとって最もなじみのあるテレビはコミュニケーション手段として価値が高いのです。
ただし、現状の「まごチャンネル」ではZoomのようなテレビ会議はできません。技術的には可能と思われるので、シニア層でも簡単に使えるテレビ会議メニューが提供される日もそう遠くないでしょう。
「新しい生活様式」には多くの「不(不安・不満・不便)」が伴います。コロナの時代でもシニアビジネスの基本は「不」の解消です。