常識破りはトータル価値を上げると社会に受け入れられる

北川教授の発明を応用したボンベ ビジネス切り口別
北川教授の発明を応用したボンベ 出典:京都大学 物質-細胞統合システム拠点サイト

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第100回

ノーベル賞受賞者は、多くが『うそつき』呼ばわりされてきた

連載第98回で「常識破り」が受け入れられる条件は、それを裏付けるしっかりとした科学的エビデンスの存在だという話をしました。

この記事掲載直後にノーベル生理学・医学賞を大阪大学の坂口志文特別栄誉教授、化学賞を京都大学の北川進特別教授が受賞との知らせがありました。

北川教授は「発表当初は『うそつき』呼ばわりされたが、事実を積み重ねると論文の引用件数が跳ね上がり、一転脚光を浴びることになった」と話しています。

常識破りの発見・発明には科学的エビデンスの蓄積が重要なことが改めてわかります。

エビデンスは必要条件、広く社会に「普及」することが十分条件

一方、常識破りが長期的に受け入れられるためには、実は科学的エビデンスだけでは十分ではありません。それが広く社会に「普及」しなければなりません。

第98回で取り上げた例で言えば、女性専用フィットネス「カーブス」は、日本導入後20年で1,996店舗、会員数86.3万人(2025年8月期)まで拡大しました。

カーブスに数か月通って5キロ以上減量した人は世界中に膨大な数います。要介護状態だった人が数か月通って健康になった人も数多くあります。広く社会に「普及」しているといってよいでしょう。

北里研究所病院の山田悟医師の知見については、ロカボと呼ぶ糖質制限により血糖値スパイクが減り、糖尿病指標のHbA1c値が低下した事例が数多く出ています。

しかし、著書「脂質起動」に示された方法で、油(脂質)を大量摂取して体重が減るかどうかは個人差が大きいようです。この知見が長期的に受け入れられるには、今後多くの人の長期間の経過観察が必要でしょう。

機能性表示食品は「機能性」だけでは売れない

実は今回の話は連載第79回で触れた機能性表示食品が「機能性」だけでは売れないのと似ています。

「機能性」は機能性表示食品としての必要条件ですが、「利便性」「コスパ感」などの「トータルな商品価値」が売れるための十分条件なのです。

「常識破り」が長期的に受け入れられるために、科学的エビデンスは必要条件ですが、広く社会に「普及」することが十分条件なのです。

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