シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第225回
生活費の節約だけではインフレへの対処は難しい
ここ数年の急激な物価高に対して、年金生活のシニアが様々な工夫を凝らして節約している姿が多くのテレビ番組で映し出されている。
こうした努力には本当に頭が下がる。だが、今後予想される継続的なインフレには、生活費の節約だけでは対処が難しいだろう。
本連載第218回でお伝えしたように、日本はすでにインフレ時代に突入している。2025年のインフレ率は約3.3%と予測されている。
政府・日銀は、今後の物価安定目標(インフレ率目標)を年2%としている。
インフレ率2%で老後20年の生活費は数千万円増える
インフレ率2%でどの程度物価が上がるかを数値で示す。生命保険文化センターが25年10月に発表した「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」によると、夫婦2人が老後に必要な最低日常生活費は23万9千円。ゆとりある生活費は39万千円となっている(図1)。
だが老後の生活費の中身は食費や光熱費が占める割合が大きく、今後はインフレの影響を勘案する必要がある。
今後毎年、2%ずつ物価が上昇した場合、10年後には老後の最低日常生活費は29万千円に、ゆとりある老後の生活費は47万7千円に上がる。20年後にはそれぞれ35万5千円、58万千円に跳ね上がる。
これらの数字を使って、退職から寿命まで20年とした場合の老後資金を計算すると、老後に必要な最低日常生活費は、インフレなしの場合5,736万円だが、インフレ率2%の場合7,395万円となり、その差は1,659万円となる。
同様に、ゆとりある老後の生活費は、インフレなしの場合9,384万円だが、インフレ率2%の場合1億2,098万円となり、その差は2,714万円となる。
夫婦2人、月25万円の年金でどの程度の生活が可能?
一方、退職後に受け取る年金が夫婦2人で月25万円とすると、インフレなしの場合、20年で受け取る額は6,000万円となる。
年金も物価変動に連動する仕組みとなっているが、マクロ経済スライドによる調整が入るため、年金上昇率はインフレ率よりも一般に小さくなる。年金上昇率を1.5%とすると、20年分で7,341万円となり、その差は1,341万円となる。
これらの試算より、夫婦2人で月25万円の年金を受け取る場合、日常生活費が老後に必要な最低レベルであれば、ほぼ年金で賄うことができる。
一方、ゆとりある老後を送るには、年金以外に12,098-7,341=4,756万円の金融資産または収入が必要となる。
インフレ時代は預貯金の価値が目減りする
前掲の生命保険文化センターの調査によれば、老後の生活資金をまかなう手段として回答者の71.4%が「預貯金」としている。問題なのは、インフレ時代には預貯金の価値が目減りすることだ。
インフレ率2%が毎年継続した場合、現金1,000万円の価値は、10年後に820万円、20年後には673万円に下がる(図2)。
メガバンクや地銀などの預金金利は、25年12月16日現在で普通預金0.2%、大口定期1年でも0.275%程度しかない。インフレ時代には、銀行に多額のお金を長期に預けておくのは危険と認識すべきだ(金利のないタンス預金がさらに危険なのは言うまでもない)。
インフレ時代に必要な老後の「3つの収入」
節約して支出を削る以外に必要なのは、収入を増やすことだ。老後の収入には①年金収入、②勤労収入、③資産収入の3つがある。
年金収入を増やす方法は、受給時期の繰り延べだ。だが、結論から言えば、男性は65歳から、女性も65歳から70歳の間に受給開始するのが良さそうだ。早めに受給を開始し、得られた収入を運用に回す方が、トータルの収入が増える確率が大きいからだ。
勤労収入、資産収入の増やし方については、次回に説明したい。実はこの二つの支援がこれからのビジネスチャンスになる可能性が大きいと思われる。



