高齢者住宅新聞 連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第1回
シニアビジネス失敗事例の代表は「中高年向け雑誌」
私は様々な業種の企業からシニアビジネスに関する相談・質問を受けます。その際に必ず尋ねられることの一つが「シニアビジネスの失敗事例を教えてほしい」というものです。
その代表例の一つは「中高年向け雑誌」です。
中高年をターゲットにした雑誌は、2000年頃から急増し、これまでに延べ100誌以上が世に出ていると言われています。
ところが、この分野で雑誌ビジネスの成功の目安と言われる10万部を超えているのは、「いきいき」(現在の名称はハルメク)」と「サライ」程度しかありません。
大半の後発雑誌が、先行するこの二つを真似して似たような内容にするのですが、結局及びません。その結果、大半が発行開始から二年以内に撤退を余儀なくされているのが現実です。
中高年向けの会員制サービスもほとんどが失敗
一方、中高年向けの会員制サービスもこれと似た例です。
ある会社が立ち上げた中高年ターゲットの健康サロンには、フィットネス、レストラン、カルチャースクールと何でもあるのですが、他のサロンにない「これ」といったサービスがないために苦戦し、3年で撤退。
また、別のある中高年向け会員クラブは、ラジオとのタイアップを差異化したものの、クラブの活動の中心となる強力な売りとならず、やはり数年後に撤退しました。
共通点は内容が「てんこ盛り」で、競合商品との差異があいまいなこと
これらの失敗事例の共通点は、内容があれもこれもと「てんこ盛り」で、競合商品との差異がぼやけていることです。
対策としては①ターゲット顧客を誰にするのか明確にすること、②競合他社にない「キラーコンテンツ」をつくることです。
①は例えば「60歳以上の人」だと曖昧過ぎるので「首都圏在住の大手上場企業の男性で、3年以内に役職定年を迎える人」のようにできるだけ具体的でイメージしやすいものがベター。
②は例えばJR東日本「大人の休日」のように自社にしかない経営資源を活用した「オンリーワン」なサービスがベストです。