シニアの消費心理を踏まえた商品提案|購買意欲を高める訴求ポイント シニアの消費心理を踏まえた商品提案|購買意欲を高める訴求ポイント シニアの消費心理を踏まえた商品提案|購買意欲を高める訴求ポイント
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シニアの消費心理を踏まえた商品提案|購買意欲を高める訴求ポイント

シニア層は若年層より資産が多くても消費に回りにくいのは、老後に対する漠然とした不安があるからです。シニアの資産を消費に促すには、「漠然とした将来不安」の解消につながる価値の提案が必要です——資産を使ってでも「必要だと思わせる説得力」「お金では買えないもの(健康・時間・楽しさ・喜び)を手に入れたいという気持ちへの働きかけ」が重要です。

01

50歳代以降に独特の消費行動は「解放段階」に起因する

加齢と脳の潜在能力との関係

神経細胞(灰白質)と神経線維(白質)東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授の研究によれば、脳の神経細胞の体積は20歳を過ぎると直線的に減っていきます。一方、神経線維の体積は年齢とともに増え、ピークは60〜70歳代です。神経線維の増加は直観力・洞察力といった「知恵の力(年の功)」に関係があると考えられています。計算・記憶のスピードは落ちますが、難しいことを同時並行的・垂直統合的に判断する力はむしろ増す——つまり脳の潜在能力は年齢とともに発達していくと考えられます。

中年期以降に訪れる4つの心理的発達段階

アメリカの心理学者コーエンは、45歳以降に4つの段階で心理的発達があると提唱しています。シニアの消費を理解するうえで特に重要なのは2番目の「解放段階」です。

1
40歳代前半〜50歳代後半
再評価段階

「いつかは死ぬ」という事実に初めて向き合う。探究心や危機感に駆られて計画を立て、行動を起こす傾向が見られる

2
50歳代後半〜70歳代前半
解放段階 ★消費に最も関係

「いまやるしかない」という意識から「内なる解放感」が生まれる。自分の要求・個人の自由意識から計画を立て、行動を起こす傾向が強まる。団塊世代はちょうどこの段階にあたる

3
60歳代後半〜80歳代
まとめ段階

自分の知恵をみんなと共有しようとする傾向が強まる。人生を振り返り、意味を見つけたいという欲求から行動を起こす

4
70歳代後半〜人生の最期
アンコール段階

人生の大きなテーマについてもう一度語りたい・主張したいという思いから、計画を立てたり行動を起こしたりする

出典:ジーン・コーエン、村田裕之・竹林正子翻訳、いくつになっても脳は若返る ダイヤモンド社

解放型消費を喚起する「3つのE」

「解放段階」における「インナープッシュ(自己解放を促す精神のエネルギー)」が消費のきっかけになる——これを「解放型消費」と呼びます。解放型消費を喚起するキーワードは次の「3つのE」です。

Excited
わくわく消費

わくわく感を醸成し、顧客の気持ちの解放を後押しすることで生まれる消費

Engaged
当事者消費

関与を深めることで他人事から自分事に代わり、当事者意識が強まることで生まれる消費

Encouraged
元気消費

心身が元気になり、活動意欲が湧くことで生まれる消費

POINT

この3つを商品・サービスに取り入れることで、顧客が思わずへそくりを使ってしまうビジネスにできる。以下の02〜04章でそれぞれ詳しく解説する。

わくわく消費——「わくわく感」が消費のトリガーになる

50歳代・60歳代には「何かをはじめたい」「リセットしたい」「変わりたい」というインナープッシュが強まります。本当に心の底からわくわくするものであれば、なけなしのへそくりをはたいてでも買いたいという顧客が必ずいます。

普通の主婦が120万円を出した理由——ボストン・ワンマンス・ステイ

ボストン・ワンマンス・ステイ雑誌「いきいき」で企画・販売した「ボストン・ワンマンス・ステイ」は、ボストンで1か月間暮らすように生活し、友達を作り英語を学ぶ複合商品です。飛行機・ホテル・食事・英語学校代込みで一人120万円(2007年5月当時)。告知2週間で定員30人を完売。参加者のほとんどは50〜60歳代の女性でした。

参加者は特に富裕層というわけではなく、ごく普通の主婦の方々でした。「将来不安はある。しかし人生の残り時間も少なくなっている。これを逃したらもう二度といけないかもしれない。それなら、いま行くしかない」——そうした気持ちを後押しする企画だったからこそ、へそくりをはたいてでも買ったのです。

「これを逃したら二度と機会がない」と思えば買う——ななつ星in九州

高級列車旅行JR九州が2013年10月に運行開始したクルーズトレイン「ななつ星in九州」は、高級感ある内外装にこだわり、グランドピアノや一流シェフの料理を楽しめる、いわば「高級ホテルに滞在したまま電車旅行できる」贅沢な体験です。料金は3泊4日で一人18.3万〜125万円(当時)という高額にもかかわらず、60歳代を中心に予約が埋まりました。

介護職員の63歳女性が第一期に参加し、「夢の列車に、最初に乗れてうれしい」と話していました。「最初に乗る」というわくわく感こそが参加動機。富裕層でなくても、「これを逃したら二度と乗れないかもしれない」と思えば買う人はいるのです。

POINT

先行き不透明な時代だからこそ、「わくわく消費」はさらに求められる。わくわくする企画を生み出せば、市場調査では見えてこない潜在顧客が出現してくる。

当事者消費——「他人事」が「自分事」になると消費する

単なるお客さんだった人が事業の一部に関与して「当事者」になることで、責任感をもって仕事をした結果、お金も使うようになる——これが当事者消費です。退職男性を巻き込みたい場合に特に有効な仕組みです。

エコースタッフという当事者消費の仕組み

コロナ禍以前に運営していたクラブツーリズムの「エコースタッフ」は、700万人の会員に旅行雑誌「旅の友」を手渡し配布する仕組みでした。スタッフは月250部の配布で約4,000円の収入を得られました。一方、エコースタッフどうしは仲間になり、溜まったお金でクラブツーリズムの旅行に行っていました。報酬が回り回って会社に戻ってくるという都合のよい仕組みであると同時に、スタッフはスタッフとしての報酬以上の出費をすることになります——旅行に行く機会が増え、それが出費の機会を増やすからです。

復興支援ボランティアも当事者消費のひとつ

現地でボランティア東日本大震災後の復興支援ボランティアにも同様の当事者意識による消費が起こりました。震災前に被災地と無縁だった人でも、現地でボランティアをすることで被災地の人たちと親しくなり、その地域が「他人事」から「自分事」になります。その結果、帰宅時に地域の土産をたくさん買ったり、友人・知人に地域の商品を積極的に勧めたりするようになるのです。

POINT

年金収入以外の副収入はそのほとんどが可処分所得になるため気兼ねなく使える。エコースタッフのように「働く→仲間ができる→旅行に行く」という好循環が当事者消費を生み出す。

元気消費——身体が元気になる、勇気づけられると消費する

心身が元気になると活動意欲が湧き、お出かけ・旅行・おしゃれなど連鎖的な消費が生まれます。また、スポーツ選手の活躍など「勇気づけられる体験」も消費のトリガーになります。

痩せてスタイルがよくなると運動着以外の服を買う

元気なシニア女性がおしゃれをして外出・旅行を楽しむカーブスで筋トレと有酸素運動をやると、体型が改善され気持ちが明るくなり、お出かけしたくなります。すると靴・カバン・化粧品・アクセサリーも必要になり、連鎖的に消費が広がります。老人ホームで認知症の症状が改善した女性がカラフルな服を着るようになるのも同じメカニズムです。

大脳の前頭前野の真ん中にある「意欲の中枢」が活性化すると、活動意欲が湧き、気持ちが前向きになることがわかっています。病気になり要介護状態になって大人のオムツにお金を使うより、元気でいておしゃれをして旅行に行く方が、個人にとってはるかに有意義なお金の使い方です。

スポーツ選手の活躍に勇気づけられると消費する

ソチオリンピックで金メダルを取った羽生結弦選手の活躍を観て勇気づけられた人は、関連グッズをたくさん買い、「自分もスケートをやりたい」という子供たちがスケート場に集まりました。楽天イーグルスが優勝したら田中将大投手関連グッズが売れただけでなく、仙台の街全体が活気づき消費が促進されました。

POINT

注意点:商品を売る側が「顧客を勇気づけよう」「顧客を感動させよう」と意図的に行うものは売れない。勇気も感動も他人からもらうものではなく、自分の中で「湧き出る」ものだからだ。操作主義的なメッセージには白々しさが付きまとい、顧客は動かない。

「家族との絆」は消費の王道

個人による消費だけでなく、「家族の関係性」による消費という視点も重要です。近居大家族消費・孫消費・親孝行消費の3つが、新たなビジネスチャンスを生み出します。

1

近居大家族消費
「スープの冷めない」距離が新需要を生む

息子・娘の家族と近居している親子が増えています。週末の食事・誕生日の外食・7人乗りミニバンへの買い替え・携帯の家族割引など、遠く離れて別居している時よりも新たな需要が生まれやすくなります。東京ディズニーリゾートの3世代割引や映画・コンサートの3世代割引も近居大家族向けと言えます。

2

孫消費
「可愛い孫のためなら」と祖父母が財布を開く

孫が消費するというよりは、「可愛い孫のためなら」と祖父母がお金を出す消費形態です。ランドセル・学習机・雛人形・五月人形・おもちゃなどの定番に加え、リカちゃん人形・人生ゲームなど、祖父母と孫が一緒に遊べる商品がヒットしています。

3

親孝行消費
年老いた親のために中高年の子供が消費する

典型的なものが「見守りサービス」です。NTTドコモ「つながりほっとサポート」、象印「みまもりほっとライン」、東京ガス「みまも~る」などの機器による検知タイプのほか、セコム・ALSOKなどの警備会社による人が駆けつけるサービスがあります。現役世代の忙しい子供がさりげなく親を見守れることが価値です。

このテーマのまとめ

  • シニアの財布のひもをゆるめるには、漠然とした将来不安を解消する価値の提案が必要。「必要だと思わせる説得力」と「お金では買えないものへの働きかけ」が鍵
  • 50〜70歳代前半の「解放段階」では「いまやるしかない」という意識が強まり、インナープッシュが消費のトリガーになる
  • 解放型消費を喚起する「3つのE」——Excited(わくわく)・Engaged(当事者)・Encouraged(元気)をビジネスに取り入れる
  • わくわく消費:「これを逃したら二度とない」という気持ちが、富裕層でなくても高額商品を買わせる
  • 当事者消費:事業の一部に関与させることで責任感と消費意欲が生まれる。エコースタッフはその典型例
  • 元気消費:心身が元気になると連鎖的に消費が広がる。ただし「勇気づけよう」という意図的な演出は逆効果
  • 家族との絆が生む消費——近居大家族消費・孫消費・親孝行消費の3つが新たなビジネスチャンスを創出する

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