「シニアの顧客にリーチするのにどうするのが一番よいか?」——製造業系の企業からよく受けるこの質問に対して、答えはアウトバウンド(企業から顧客へのアプローチ)ではなく、インバウンド(顧客から企業へのアプローチ)を促すことにあります。このテーマでは、シニア顧客に対する賢いアプローチの方法をお話しします。
アウトバウンドよりインバウンドを促す

アウトバウンド
企業から顧客にアプローチする方法
- 飛び込み営業・アポなし訪問
- 電話による売り込みセールス
- チラシのポスティング・メールボックス投函
- 宛名なしのDM送付
インバウンド
顧客から企業にアプローチしてもらう方法
- コールセンターへの問い合わせ
- メールでの問い合わせ対応
- 消費者が探している時にタイミングよく情報提供
- 欲しがっている情報を発信してリーチ
シニアビジネスでは必死でアウトバウンドをするより、どうすればインバウンドが増えるかを考えるべき。コールセンターを単なる問い合わせ窓口ではなく、顧客の潜在ニーズをキャッチするアンテナ機能として位置づけることが重要。
コールセンターは売上向上の戦略拠点と心得る
コールセンターを単なるコストセンターと考えてはいけません。売上向上のための戦略拠点として位置づけ、以下の4つの要件を整えることが重要です。
コールセンターに電話してくる人は何らかの「不満」「不便」を感じている人です。いつかけても話し中、長い待ち時間、たらい回しは厳禁。利用者の「不」を増大させ、ネガティブイメージをより強くしてしまいます
シニア顧客は「何がどうなっているのかわからないけれど、とにかく動かない」という状況で電話してきます。まずじっくり聴き、解決したいことを正確に把握すること。専門用語ではなく平易な言葉で説明する訓練も必要です
きちんとした敬語は基本ですが、過度に丁重な言葉遣いはいんぎん無礼な印象を与えます。会話はマニュアル通りには進みません。ロールプレイを繰り返し、臨機応変に対応できる人間力を身に着けることが必要です
使い勝手なら製造部門へ、売り方なら営業部門へ——各部門に有用な情報が行き渡る仕組みを持てば、クレームの電話も貴重な知的財産に変わります。コールセンターは市場情報受信装置と考えるべきです
商品の種類で有効な方法を使い分ける
シニア顧客への効果的なリーチ方法は、提供する商品やサービスの種類により異なります。ターゲット客に対して何を訴求したいかをじっくり考え、ふさわしいメディアとアプローチの組み合わせを決定すべきです。
金融商品(投資型)
プライバシー性が強く家族にも相談しにくい。購入者が独力で情報収集する傾向が強く、新聞・雑誌の記事、ネット情報、金融機関スポンサーのセミナーが有効。詳細情報は銀行・証券会社スタッフに求める
旅行商品
ネット非利用者は新聞・雑誌広告・チラシ、ネット利用者はサイト情報を参照。どちらも最重視するのは「信頼できる友人・知人の意見」。実際に訪れた人のクチコミが旅行代理店のスタッフより重視される
趣味・習い事
講師は誰か、教室の雰囲気はどうかを重視する女性が多い。パンフレットより実際に行った人の意見・ネット上のクチコミを丹念に調べ、最終的には自分の目で雰囲気を確かめてから意思決定する
スポーツジム
「2か月間会費無料」などのお得感訴求は飽きられている。シニア層は健康増進・体力向上が目的なので「本当にやせられるか」「どのようなサポートをしてくれるか」を重視。友人・知人の口コミが圧倒的に有効
健康食品・化粧品
BS・CSテレビ通販、新聞・雑誌・ネット広告が多く大激戦。コストパフォーマンス(効能と価格)が重要な意思決定要因。サントリーウェルネスのようなテレビCM+新聞一面広告+折り込みのメディアミックスが有効だが、最終的にはリピーターになる効能が決め手
住宅リフォーム
数百万円程度の高額出費なので価格と品質に敏感。「やってみないとわからない」性質の商品であるため、友人・知人・家族などの評判情報を大いに参考にする。地元の工務店・リフォーム店が大半を占める業界
シニアにリーチしやすいメディアを活用する
シニア向けの情報発信には、シニアが信頼し・よく読む媒体を選ぶことが先決です。行政メディア・フリーペーパー・会員誌・シニアが集まる「場所」の4つが特に有効です。商品の種類によっては、テレビとネットも有効です。
市町村が発行する広報誌は、シニアが最も信頼をおき、じっくり目を通す媒体です。役所の掲示板・そばに置いてあるチラシも結構よく見られます。市町村の交流センター・シルバー人材センター・公民館・体育館なども情報発信メディアとして有効。ただし、いかにも売り込みという内容ではなく、読んだ人が役立つ情報として提供する工夫が必要です
タブロイド紙・雑誌型の地域密着型無料情報誌です。クーポンは「利用して得する」ものが多く、主婦層が熱心に利用しています。代表的なものは「リビング新聞」「ぱど」など。国内で1,000紙以上が発行されています。配布形態はラック設置(45%)・新聞折り込み(36%)・公共施設配布(35%)・ポスティング(33%)の順。都市型メディアのため利用は都市部に限定されます
多数のシニア会員をもつ企業の会員誌は、広告出稿やタイアップ企画も受け入れています。ただし、会員を有する事業の内容とイメージがかけ離れた広告は注目率が低くなるため注意が必要です
- JR東日本「大人の休日倶楽部」(会員限定、有料)——約116万部(2026年1月現在)
- ゆこゆこ「ゆこゆこ」(登録者限定、無料)——約100万部
- カーブス・ジャパン「カーブスマガジン」(メンバー限定、無料)——約87万部
- ハルメク「ハルメク」(購読者限定、有料)——約46万部
- KADOKAWA「毎日が発見」(購読者限定、有料)——約13万部
- 百貨店——三越・高島屋・松坂屋上野店など
- 演劇場——歌舞伎座・新橋演舞場・明治座など
- 講演会——自治体・テレビ局・新聞社主催のもの
- コンサート会場——東京文化会館・サントリーホールなど
- 映画館——各シネコン(平日昼間はシニアが多い)
- 商店街——巣鴨地蔵通り(庶民的)・麻布十番・広尾(やや裕福)・神楽坂(若干若め)
シニアに人気の商店街は、シニア向け商品のアンテナショップ出店に適しています。ただし商店街ごとに客層が異なる点に注意
このテーマのまとめ
- シニアビジネスでは必死でアウトバウンドをするより、インバウンドが増える仕組みを考えることが先決
- コールセンターはコストセンターではなく売上向上の戦略拠点。つながりやすく・よく聴く・丁寧な対話・社内反映の4つが要件
- 商品によって有効なリーチ方法は異なる。金融・旅行・習い事・スポーツジム・健康食品・リフォームそれぞれに合った方法を選ぶ
- 行政メディア(広報誌)はシニアが最も信頼してよく読む媒体。フリーペーパー・会員誌・「場所」も有効なメディアになる


