退職後、職場に代わって毎日定期的に行く所がなくなる人が、特に男性サラリーマン退職者に多い。したがって、職場がもっていた有形・無形の価値に置き換わる受け皿としての「第三の場所」が、新たな事業機会を生み出す。「第三の場所」とは、家庭(第一の場所)でもなく、職場(第二の場所)でもない場所をいう。
たとえば、新業態カフェの「マザー・カフェ・プラス」では、カフェそのものは、人同士を結びつけるエージェントとしての役割で、そこに集まった人たちがさまざまなサービスを利用することで、事業収益を上げている。一方、生涯学習サービス「LLI」は、学習意欲の高い年長者のための行きつけの場所であり、それが存在することで、人が集まり、学習テーマに沿った新たな動きが起こり、旅行などの需要が生まれている。
クラブツーリズムが運営している「クラブツーリズム・カフェ」は、旅行好きなクラブツーリズムの会員が利用できる場所であり、そこでの交流を通じて旅行を含む新たな需要を期待する事業モデルである。
百貨店は、最上階の催事場を週代わりあるいは月代わりの展示場にし、しばしば客寄せの目玉に活用している。これは、展示場そのものではそれほど売り上げが上がらなくても、来店者は最上階から下に降りながら何らかの買い物をする確率が上がる、いわゆる「シャワー効果」である。
退職者のための「第三の場所」を事業として考えるとき、この「シャワー効果」と同様に、毎日継続的に立ち寄る場をつくり、その周辺に何らかの商品・サービスを使う機会を設けることが重要となる。それも、立ち寄る場での活動の延長上にあるサービス機会であれば、なおよい。