民放ラジオのネット番組配信はうまくいくか?

 
 

2010年2月15日 Vol. 138

村田裕之
 

2月13日の日経新聞によれば、
TBSラジオやエフエム東京など13の大手ラジオ局は
3月にもネットによる本格的な番組配信を始めるという。

ラジオ受信機の普及台数が減るなか、
パソコンや携帯電話で番組を聴く機会を増やし、
減少が続く広告収入をてこ入れするのが目的とのこと。
6カ月間の試験期間を経て、今秋以降に本格的な配信を
目指すとのことだ。

私はこの記事を読んで、正直、日本のラジオ放送業界は
世界の動きに比べて相当遅れていると思った。

そして、日本のラジオ業界がネットでの番組配信を行っても、
もくろみ通り広告収入を増やすのはかなり難しいと思う。

その理由は、現時点でパソコンやiPhoneなど携帯電話でも
世界の大手ラジオ局の良質な番組が聴けることから、
これとの競合が避けられないからだ。

しかも、これらの端末では、ラジオ番組だけでなく、
世界中のテレビ番組も視聴できるようになっている。

日本のラジオ局がネットで番組配信を始めるというのは、
世界の大手メディアがすでにしのぎを削っている土俵に
割って入ることを意味する。

この土俵で勝つのは容易ではないだろう。

従来のLP、CDといったパッケージメディアによる音楽流通を
革新したのは、アップル社が開発したiTunesによる
ネット音楽配信である。

このiTunesと連携する携帯端末iPodは、
音楽鑑賞の在り方だけでなく、
音楽流通の在り方も大きく変えた。

そして、すでに日本でも大ヒットしたiPhoneの発売により、
先に述べたように従来のテレビ・ラジオ番組の
配信スタイルを革新することになった。

たとえば、iPhoneでは、France Inter, France Infoといった
フランスの大手ラジオ局の番組を視聴できる。
これらの番組はもともとネットで配信されており、
パソコンを使えば以前から視聴できた。

その後、iPod Touchが無線LAN対応機能を搭載してから、
これらの番組をマクドナルドなどの無線LAN環境が
あるところで自由に視聴できるようになった。

ところが、携帯電話機能がついたiPhoneの登場により、
携帯電話のつながるところであればどこででも、
こうした番組が視聴できるようになった。

しかも、録音ではなく、生放送が、である。

たとえば、埼玉県の和光市駅で電車を待っている時に、
フランスの大手ラジオ局France InterやRFMなどの
洒落た番組が「生放送」で聴けるのである。
シャンソンが好きな年配者にはたまらない体験だ。

これには私も驚いた。
20年以上前のフランス滞在時代を懐かしく思い出しながら、
時代の変化を改めて感じた次第だ。

また、もともとiTunes経由で配信されている
膨大な数のラジオ番組がアプリをインストールすることで
iPhoneでも聴けるようになっている。
これらも高速回線ではなく、通常の携帯の3G回線で、
十分な音質で聴ける。

さらに、別のアプリを使えば、生放送ではないが
世界の大手テレビ局の番組を視聴することができる。
たとえば、CNNやNBCの番組で、先週のワシントンでの
大雪に関する現地の生々しい状況を逐一知ることができた。

また、フランス国営放送TF1やドイツテレビZDFなどで
トヨタのリコール問題が連日トップで取り上げられており、
この問題が世界中で話題になっている様子が、
麻布十番のコーヒーショップにいながらにしてわかるのだ。

このように携帯やネット端末は、
すでに膨大な数の先客でひしめいている。

日本の大手ラジオ放送局の人たちは、
こうした現実をしっかり認識したうえで、
差別性のあるネット配信戦略を実行できないと、
当初のもくろみを達成するのは難しいだろう。

 

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●参考情報

スマートシニア・ビジネスレビュー 2008年4月11日 Vol. 116
IT化で見えてくる意外なもの

スマートシニア・ビジネスレビュー 2007年10月9日 Vol. 109
アナログ名曲のデジタル化で見えるもの

スマートシニア・ビジネスレビュー 2006年7月31日 Vol. 90
ネット利用率の変化から見えるもの

 

 
 
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