シニアビジネスが生まれる街・ボストン

 
 
2007年10月29日 Vol. 110
村田裕之
 

松坂・岡島の活躍で日本でもすっかりおなじみになった
大リーグチーム、ボストン・レッドソックス。

この本拠地のあるボストン界隈は、
実はシニアビジネスの面でも
多くのイノベーションが見られる場所だ。

世界で初めて55歳以上の人に特化した
生涯学習型旅行を開発した「エルダーホステル」。
カレッジリンク型シニア住宅の「ラッセル・ビレッジ」。
従業員平均73歳のステンレス製品会社「バイタ・ニードル」。
MITのAgeLabなど、皆ボストン界隈にある。

そのボストンの市街地ビーコンヒルにある
「ビーコンヒル・ビレッジ」という取り組みが、
いま全米の多くの地域に広がりつつある。

拙著「シニアビジネス」で初めて日本に紹介したこのサービスは、
高齢化した街の住民に高齢者施設で受けられるのと
同様のサービスを提供しようというものである。

提供するサービスは食料品などの買物代行や交通手段を提供する
「ビレッジ・コンシェルジュ」という生活支援サービス、
ボート上でのディナーやフィットネス教室など
地域住民との相互交流を促すコミュニティ・サービス、
そして灯油などの生活用品の会員向け割引だ。

なぜ、ビーコンヒルでは、こうしたサービスを始めたのか。
理由の第一は、アメリカでは子供の世話にはなりたくないが、
施設で暮らすのも嫌だという人が依然多いこと。

ビーコンヒルは、ボストン中心部の古くからある高級住宅街で、
約8平方キロの地域に9,000人が住んでいる。
その14パーセントの1,300人がすでに60歳以上となっているが、
大半が年老いてもリタイアメント・コミュニティなどの施設に行かず、
ここに住み続けたいと思っているのだ。

AARPの調査ではアメリカ人の45歳以上の83%が、
可能な限り長く自宅に住み続けたいと思っている。

しかし、年老いて一人暮らしになった時、
どうやって日々の生活をおくり、
いざという時に備えられるかの不安は大きい。
このあたりの状況は日本と同じだ。

理由の第二は、行政など公的機関が提供するサービスより
住民主導で提供するサービスが望まれていること。

日本でもそうだが、公的機関によるサービスは、
税金が財源のため、必要最小限度の内容となる。
そうではなく、自分たちのこれまでの生活水準を維持するための
サービスを求めている人が多いのだ。

この仕組みを自分たちの地域でも取り入れようと、
コネティカット州ニューカナン、ニューヨーク州ブロンクスビル、
バージニア州アレクサンドリア、カリフォルニア州パロアルトなどで
同様の取り組みが始まった。

このように他地域に広まる動きは
一体何を意味しているのか。

それは端的に言えば、
既存のリタイアメント・コミュニティに対する
高齢者の不満の表れだ。

高齢者だけが集められて、
お仕着せの食事やサービスが提供される
既存のリタイアメント・コミュニティで提供される
ライフスタイルへの不満なのだ。

私が講演や著作で何度も強調しているように
シニアビジネスのヒントは、
必ずこうした「不」の解消にある。

アメリカの歴史が始まった地・ボストンは
開拓者精神が他の地域より強い。

ボストン界隈に「不」の解消を
具体的なビジネスにする動きが多いのは
この開拓者精神と無関係ではないだろう。

 

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●参考情報
シニアビジネス−多様性市場で成功する10の鉄則 (ダイヤモンド社) 

 

 
 
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