「自分らしい生き方」という病
 
 
2006年2月20日 Vol. 82
村田裕之
 

定年退職をまもなく迎える方に、
「これまでは会社のために生きてきた。
これからは自分のために、自分らしく生きたい」
とおっしゃる方が少なくありません。

一方、
「もっと自分らしく生きなさい」
「自分らしい生き方を大切に」
といった言葉は、新聞や雑誌などで
専門家の助言として頻繁に見られます。

しかし、この「自分らしい生き方」というのは、
なかなか容易ではありません。

なぜなら「自分らしい生き方」と言った時に、
「自分らしさ」というのが、
実は自分自身でさえ、
よくわかっていないことが多いからです。

人間は7枚のヴェールをかぶっている。
それを6枚までは脱ぐことができる。
しかし、最後の1枚は自分にすら脱がない。

かつてニーチェが語ったこの言葉は、
「自分らしさ」を追っかけても、
「自分らしさ」は見えてこない、
という意味にも聞こえます。

世の中に「天才」と呼ばれる人が
少なからず存在します。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、
アルベルト・アインシュタイン、
パブロ・ピカソといった人たちです。

これらの人たちには共通点があります。
それは、他人から「天才」と呼ばれる人たちに、
「自分自身が天才だ」と言った人は
いないことです。

つまり、自ら「天才らしい生き方」を求めて
天才になった人など存在しないのです。

このことから言えるのは、
「自分らしい生き方」をしている人は、
「自分らしい生き方」いう言葉を使わない
ということです。

そうした言葉を使う代わりに必要なことは、
自分の歩んでいる道が、
自分の気持ちに偽りないものかを
常に問い続けること。

そして、それができた時、
その人は、すでに"自分らしく"
生きているのではないでしょうか。

 


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