自分の強みを深く知り、インプットの機会を増やす、それが新商品開発の極意だ
 
  2005年10月号 第25回
村田裕之

スターバックスの進化の裏には、必ずこのシュルツ氏の発想がある。

一九七一年にシアトルのウォーターフロントに始めてスターバックスが開店した時、この店は単なるコーヒー豆販売店だった。 シュルツ氏がスターバックスに参画したのはその後の一九八二年。

その翌年の一九八三年に、彼は休暇でイタリア旅行に行く機会があった。だが、そこで彼の目を惹いたのは、イタリアならどこにでもあるエスプレッソのバーだった。

イタリアンローストの強烈な香りが一杯に漂う店の空間で、人々がエスプレッソを味わいながら、楽しそうに会話を楽しんでいる。

こうした空間の心地よさは、これまでのアメリカのコーヒーショップでは体験できないと感じた彼は、このイタリア風エスプレッソバーをアメリカ人向けにアレンジすることをひらめいた。これが深煎りコーヒーを売りとする現在のスターバックスのスタートである。

こうして、単なる「コーヒーを売る」店から「コーヒーを伴う体験を売る」店へと進化した。これが最初のブレークスルーである。
(中略)

このエピソードは何を語っているのか。それは革新的なヒット商品のアイデアというのは、市場調査からは生まれないということである。ウォークマン以前にウォークマンはなかったのである。だが、一度ウォークマンのような商品が具体的に目の前に出現すると、「こういうのが欲しかった」という人は多く現れた。

つまり、そうした商品のニーズは、多くの消費者のなかに潜在的には存在していたが、そのニーズは消費者の側からは具体的に顕在化することはなかった。なぜなら、消費者自身がそうしたニーズの存在に気がついていなかったからである。

新商品開発において大切なのは他人の意見ではない。むしろ、「自分の強み」を深く知り、自分の感性のアンテナにひっかかる「インプットの機会」を増やすことの方がよほど有用なのである。

(本文より抜粋)

 

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