歴史のある建造物を活かした新しい街づくりに、もっと目を向けるべきだ
 
  2005年9月号 第24回
村田裕之

西海岸の大都市サンフランシスコでよく目に付くのは、「ヒストリック・リハビリテーション(歴史的建造物の修復)」という看板である。

街の至る所でいわゆる再開発が行われているが、そのスタイルに変化が見られる。 一昔前は、古いビルのある地域を全面的に取り壊し、新しいビルを建てることが多かったが、最近は、古い建物の躯体を活かし、内装を改修する「リノベーション」が目立つ。

サンフランシスコの東の端にあるフェリービルディングはその典型だ。もともとは一八九八年に完成したフェリーボートの波止場のビルだったが、二〇〇三年に完成した修復で、今やお洒落な名所に姿を変えた。

建物は、ヨーロッパでよく見られる駅舎のようなつくりだが、中は一階が特色ある専門店ばかりを集めたショッピングモール、二階が小奇麗なオフィス街である。 。

(中略)

一方、わが国に目を向けると、大都市東京でも多くの再開発プロジェクトが進行している。だが、その大半は、既存のビルのある地域を一斉に取り壊し、更地にして高層ビルを建て、高価なブランドを中心としたテナントを誘致する手法がほとんどだ。

こういった「ご破算方式」は、開発の自由度が高く、手間暇がかからない半面、「歴史という価値」が、いとも簡単に捨て去られてしまう。

東京周辺にはこうした再開発の裏で古い中小ビルの多くが手付かずのまま存在している。民間デベロッパーは、ご破算方式で高層ビルを建てるだけでなく、古い建物を活かした魅力的な街づくりにもっと目を向けるべきだろう。

また、民間デベロッパーが歴史的価値のある建物をリノベーションする場合は、行政には、単なる再開発よりも税制面で優遇措置を施すなどの積極的な支援策が求められる。

こうした古い建造物を生かした新しい街づくりの手法は、日本の多くの地方都市で進む駅前通りなどの中心市街地の空洞化対策にも大きく役立つはずである。

(本文より抜粋)

 

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