ざわわざわわと騒がしい”森山良子”周辺。ブランド再生なるか?
 
  2004年6月第4週号 今週の先見トピックス
村田裕之
ブランド再生が注目されている。情報化社会の現代では、無形資産である企業のブランドは、保有する土地、建物などの有形資産以上の価値をもつようになる。だから、失墜したブランド、時代遅れのブランドをいかに再生するかが経営上の大きな課題となる。

このブランド再生のヒントになるのが、30年前から歌い続けてきた「さとうきび畑」が近年大ヒットして再び注目を集めている歌手の森山良子だ。

1967年にデビューした森山良子は、かつて「日本のジョーン・バエズ」と呼ばれた。ジョーン・バエズは、1960年代にアメリカがベトナム戦争への介入を深めていた頃、「フォークの女神」と呼ばれていた反戦・平和運動の旗手だ。当時の森山良子のプロデューサーが、彼女を「日本のジョーン・バエズ」として売り出そうと、ジョーン・バエズのテレビ中継に共演させ、一躍有名になった。それ以来、森山良子は「カレッジフォークの女王」と呼ばれるようになった。

だが、気取らず、説教臭さのない彼女の音楽スタイルは、バエズとは対極的なものだった。「女王」という言葉には支配者・権力者のイメージが強い。だが、静かに、心を込めて、切々と語るように歌う彼女のスタイルは、女王のイメージとは無縁だった。

このように、当初の森山良子のブランドは、カレッジフォーク・ブームの頃、彼女を売り込みたい人によって作られたものだ。だが、近年の彼女のブランドは、彼女の温かみのある歌声と飾らない語りに対するファンの共感が生み出す「現代の語り部」としてのものである。森山良子を見ていると、ブランドとは、「買い手の共感の結果」であることを知る。売り手による作為的なブランドは、長続きしないのだ。

なぜ、今、彼女のブランドが生命力をもつのか。デビュー以来、ギター片手に静かに聴衆に語りかけるスタイルが、彼女の「原点」であり、それを30年以上一貫して維持してきた。その姿勢に「さとうきび畑」という反戦のメッセージソングが重なったところに、時代が共鳴したのではないか。

したがって、この森山良子に学べば、企業のブランド再生には、経営者に「原点回帰」が必要なのである。なぜなら、ブランドイメージが失墜あるいは時代遅れになっている企業では、経営者が起業の原点を忘れ、本末転倒した経営がまかり通っていることが多いからだ。このことは、最近の三菱自動車の姿を見れば明らかであろう。

カルロス・ゴーン社長就任後、V字回復を実現した日産自動車は「コミットメント(確約)の会社」と見られるようになった。どん底の業績下で業績回復を必ず成し遂げるというコミットメントを公にし、実行したからだ。このような、経営トップが腹をくくって覚悟を決める姿勢が多くの人の共感を呼んだ。

ブランド再生のためには、まず、経営者が起業の原点に回帰すること。そして、その姿勢を公に示すことである。生命力あるブランドとは「売り手が再生する」のではなく、「買い手によって生まれ変わる」ものだからだ。
 

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