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「もし、ニューヨークに住む85歳の母親が
急に倒れ、介護が必要になった時、
どうすべきか」
― サンフランシスコ在住のジェニー・スミス(52)は常に心配であった。
ジェニーのような40代から50代の
ベビーブーマーにとって
高齢者介護は大きな課題である。
しかし、最近米国ではどこの
ケアマネジャーが評判良く、
周辺ではどんな施設で、
何のサービスが提供されているか
インターネットで知ることができる。
カリフォルニア州バークレーにあるケアギバー・ゾーンは、
介護をする人(ケアギバー)向けに
このような情報を提供して会員数を増やしている。
さらにケアギバーどうしが情報交換できる
電子コミュニティを運営し、会員の評判もよい。
「高齢の両親の面倒をみるケアギバーの大半は
ベビーブーマーの女性。家にこもりがちで話し相手も少ない。
しかし、ネットなら介護という共通の悩みを持つ人どうしが
気軽に話せる」と、社長のイザール・マツケビッチは言う。
シリコンバレーの中心地パロアルトに「シルバーサーファー」と
呼ばれるシニアのネット愛好者グループがある。
近年増加しているアシステッドリビングと呼ばれる
介助付き集合住宅における先進ネット利用者である。
毎週月曜日夜八時から勉強会が開催される。
勉強会ではパソコンではなくテレビ型のネット端末を使用する。
題材はネット上のコンテンツを利用。
筆者が訪れた時はNASA(連邦航空宇宙局)のホームページで
日本の高齢化を勉強していた。
出席者は十五人程度、平均年齢は八二歳。
全員がここに来るまでネットとは無縁である。
「家族との連絡が高価な長距離電話を使わずに
電子メールでできるようになった」と、
アトランタに子供が住むロザリオ・ホール(75)は言う。
サンノゼに住むキャサリン・ルイス(72)は
友人の紹介でシニア向けパソコン教室シニアネットに参加した。
彼女はパソコンを間近に見るのも、
操作するのも全く初めてであった。
しばらくして、とても自分にはできそうもないと
自信喪失した彼女は講師に
「72歳の年寄りにこんな機械が使える訳がない」と絶叫した。
すると、その講師は冷静な声で答えた。
「私は85歳です。私も2年前にパソコンを始めたばかりです」
その後コーチに昇格した栄養士の彼女は
ネット上のヘルスケア情報を活用した健康管理方法についても
「生徒」に教えている。
これら三つの事例は、
米国ではシニアのネット利用が生活に浸透していること、
さらに初心者が利用スキルを習得しやすい環境があることを示している。
既にシニアのネット利用率が
20%近くに達している米国に対して
日本では日本総合研究所の最近の調査によると3%である。
しかし、実は未利用者の半数以上が
「これから使いたい」と答えており、
潜在利用者は多いと見込まれる。
では、なぜ、現状では利用しないのか。主な理由は
@使い方が難しい
Aネットを使って手に入れたい情報がない・情報をやり取りする相手がいない、である。
@については、画面の小さな字やキーボード操作に対する
高齢者特有の心理的バリアがある。
しかし、シニアネットの事例は本人のやる気さえあれば
高齢はハンデにならないことを示している。
むしろAの理由が重要である。
何が日本に不足しているのか。
第一にシニアを対象とした
価値の高い「情報サービス」が少ない点、
第二にシニアが情報交換できるあるいは
ネット利用スキルの支援を受けられる
「場」が少ない点、が挙げられる。
米国ではシニアのネット利用者の増加に伴い、
シニアコム、シニアセンターといった
生活密着型の情報提供サイトが増えている。
利用者の増大を見込んで企業が先行的にサービス提供すると、
さらに新規利用者が増大するという循環がある。
従って、多くの潜在利用者が見込まれる日本でも
高付加価値な情報提供サイトが増加すれば、
新規利用者の増大が十分見込まれる。
しかし、これと並んで重要なことは
シニアの情報発信を促進するための「場づくり」である。
筆者は従来、豊富な人生体験に基づく
知識と智恵を有するシニアが
情報武装した「スマートシニア」になることで、
その知的資産を商品開発や若年層の育成に活用できることを
繰返し主張してきた。
最近、様々な活動を通じて痛感するのは、
日本にも情報発信を希望するシニアが増えていることである。
実はネットの普及が今後このような傾向を加速する。
これまで社会に対して「サイレントマジョリティ」だったシニアが
ネットにより情報発信力をもつ「草の根オピニオンリーダー」になれる。
これがシニアのネット利用を促進する大きな動機になると思われる。
従って、今後の対策として、
シニアによる社会への様々な情報発信を支援する
「電子コミュニティ」の創設、
情報発信のためのスキル習得を支援する
「ラーニングセンター」の設置を提案したい。
実際、日本でも姫路でのシニアバレー構想、
久留米・仙台のシニアネットなどの活動が増えている。
スマートシニアが増える土壌は日本にも根付きつつある。
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