これからのメンタルヘルス・ケア産業とは
 
  2004年12月号 第11回
村田裕之
 

厚生労働省の本年10月の発表によると、仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神障害を発症したり自殺したりして、今年度上半期で労災請求した件数が246件、認定件数が47件といずれも過去最多となった(図表1)。 いずれの件数も過去最多だった前年度一年間の記録を更新するペースとなっている。

このような急激な増加の理由として、うつ病などの精神障害が労災に認定されるとの認識が広まったほか、リストラの影響で一人当たりの仕事量が増え、サービス残業など過重労働の増加があるといわれている。

これらの背景から、厚生労働省は、労働安全衛生法の改正を目指すなど職場におけるメンタルヘルス(心の健康)対策を強化する方針を打ち出した。

(中略)

これまで述べたとおり、これからのメンタルヘルス・ケアは、医師などの一つの分野だけでは不可能であり、多くの異分野の専門家との協働が必要となる。

さらには、各々専門家どうしのコンバージェンスが必然となってくる。たとえば、2003年の司法書士法の改正により、司法書士は、簡易裁判所における訴訟代理等の業務が可能になった。こういった業務は、従来弁護士の領域だった。これは、司法書士と弁護士とのコンバージェンスといえる。

このように、メンタルヘルス・ケアのサービス提供者となる各々専門家にもコンバージェンス化の波が押し寄せている。メンタルヘルス・ケア産業がコンバージェンス型産業だからである。

こうした流れのなかで、弁護士、税理士、行政書士、臨床心理士などの「サムライ業」は、新たな進化が求められる。つまり、これからは、単にサムライ業の資格を取っただけでは市場価値がない。かつ、その専門性だけでは、もはや不十分な時代になる。

こうした市場環境に適応する方法は、何か。一つは、戦略的提携で対処することである。これは、前掲のアーツが実践しているやり方である。 もう一つは、「多能工的なサムライ業」になることである。

今後、サムライ業のコンバージェンス化がますます促進され、 サムライ業同士の境界がどんどんなくなっていく。これはかつての規制産業である金融業、証券業、保険業、エネルギー産業を見れば明らかである。 こうしたサムライ業のコンバージェンスが生み出すのは、「全包括的なメンタルヘルス・ケアのプロフェッショナル」という新しい職種であろう。

コンバージェンスの結果、生まれてくるものは、単に従来の機能を併せ持つだけでなく、個別では持ち得なかった全く「新しい性質」を獲得するからである。

(本文より抜粋)

 

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