シニアの新しいリタイアメント・スタイル
 
  2002年10月増刊号
村田裕之
 
岐路に立つアメリカのリタイアメント・コミュニティ
 

アメリカでは退職者向けに
「リタイアメント・コミュニティ」という居住形態が発達しており、全米で1100を超える
コミュニティが建設されている。

その先鞭をつけたのは60年にアリゾナ州に
55歳以上に居住者を限定した大規模な
「サンシティ」を建設したデルウェブ社である。
デルウェブ社はその後、全米各地に17箇所のサンシティを展開し、その入居者数は合計10万人を上回り、
「アクティブ・アダルト・コミュニティ」という
居住形態を普及させた。

ところが、いま、このリタイアメント・コミュニティは大きな岐路に立っている。

その理由は、7600万人という圧倒的な人数で戦後の消費をけん引し、社会的に大きな影響力をもってきたベビーブーマーの
最年長者が55歳を超え、いわゆる「リタイアメントの年齢」に達したことだ。

この「新しい高齢者」は、老年学者のケン・ダイクウォールドがベストセラー「Age Wave」で述べたように、、その意識や価値観において「従来の高齢者」と大きく異なっている。

しかし、既に建設されているリタイアメント・コミュニティは、
従来の高齢者の好みや嗜好に合わせてデザインされているため、
この「新しい高齢者」の嗜好には、もはや合わなくなっている。

かつてサンシティで最も重要視されたものは広いゴルフ場や
シャッフルボード・コートなどのレジャー施設であった。
しかし、当事者のデルウェブ社CEOハネマン氏は、
自らが実施したベビーブーマー調査をふまえ、
「われわれは、もはやシャッフルボード・コートは作らない。
かわりにこれからはコンピュータルームや温浴施設、
そして大学のクラスルームを作る。」と語っている。

全米退職者協会(AARP)の2001年の調査でも、ゴルフコース、太陽光線の多さ、
シニアセンターはもはや退職者にとって優先順位は低く、
かわりに、よい隣人関係や自分の好きなスタイルで仕事ができることなどが
優先順位の上位に挙げられている。

実は、このような「新しい高齢者」のニーズを先取りした居住コミュニティが
ここ数年いくつか出現している。
これには大きく二つの方向性が見られる。
ひとつは「学習の場」との融合、もうひとつは「仕事場」との融合である。

 

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