マンハッタンのシニア向け高級アパートが示すもの
 
  2005年6月号 第17回
村田裕之

ニューヨーク・マンハッタンの高級アパート街の一角で赤いスーツを着飾った八〇歳前後の年配女性二人連れが、専用リムジンを待っていた。

ニューヨークといえば、ブロードウェイというイメージが強い。きっと、これから流行のミュージカルにお出かけなのだろうと思っていた。

だが、高級リムジンが彼女らを乗せて行った先は、ブロードウェイではなく、その近くの病院。

よく見ると彼女らが出てきた建物は、ホテルに似ているが、少し様子が違う。そこにいる人たちは、スタッフ以外、全員七十代以上の年配者。ダイニングに、フィットネス設備、おまけに介護サービスもついている。

ここは実は、シニア向け高級アパートなのである。

(中略)

日本では、「入居者はお客様」という位置づけで、お客様のやりたい放題を許容するのがサービスと思っている施設も多い。

これに対して、米国では「入居者はコミュニティ(生活共同体)の一員である」という位置づけで、公私の区別をはっきりとする。こうした「けじめ」の存在が、適度な緊張感を生みだし、入居者は自分の身だしなみにも気を配るようになる。 その結果、外見も中身も若々しく過ごすことができる。

都心回帰の時代の集合住宅に必要なのは、装飾に贅を尽くした重々しい建物ではない。そこに住まう人々が誇りをもって生活できる成熟したコミュニティ文化こそが求められる。

(本文より抜粋)

 

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