質の競争のなかで問われるもの
 
  2004年1月号 第1回
村田裕之

日本の有料老人ホームは
いま設立ラッシュだ。

2ヶ月前にある運営会社が
東京と大阪で説明会を開催した。
参加資格を60歳以上に
限定したにもかかわらず、
各々定員600名に対して倍の1200名の募集があったという。

だが、活況を呈してきた
有料老人ホームも、 新規参入が増え、
いよいよ価格破壊の時代に入った。

従来入居には
数千〜数百万円の入居一時金と
15〜30万円の月額利用料がかかる。

ところが、最近都内で、
入居一時金170万円、
月額利用料16万8千円という
破格のサービスが登場し、
注目を浴びている。

また、月額利用料は21万円だが、
入居一時金を0にするところも現れた。

価格破壊は、これまで入居したくても
できなかった人に門戸を開き、
新たな客層の拡大につながる。

だが、低価格化は次の課題も生み出す。

第1に居室が狭く、内装も質素になること。
第2に大浴場や娯楽施設などの共用部分が最小限になること。
第3に食事が業者による仕出しになりがちなこと。

(中略)

そして、このような価格破壊の後に現われるのは、
限界コストで運営される「画一的な施設群」だ。
これでは、まるで高度成長期に
大量に建設されたマンションに逆戻りだ。

現代の豊かな生活に慣れた人にとって、
このような画一的な施設は、息が詰まって耐えられないだろう。

したがって、価格競争が一段落した後は、必ず「質の競争」に向かう。
その最初の段階では、従来の老人ホームらしくない「高級感」が勝負になる。

実は、この競争は、シニア住宅先進国の米国では経験済みだ。

その代表は、高級ホテルチェーン、ハイアットの関連会社が運営するシニア住宅。
ホテル風の洗練された施設と行き届いたもてなしが評判だ。
日本で人気の高級老人ホーム、サンシティも設計者は全て米国人である。
ホスピタリティ産業先進国のもてなしノウハウは、日本の富裕層をも惹きつけている。

だが、これで競争は終わらない。
高級感が達成された後、次は「知的な楽しさの提供」が勝負になる。
豊かな現代に生きるシニアは、単に食べて、介護されて、
寝るだけの生活では満足できないからだ。

人間にとっての最も知的な楽しみ、それは「学び」だ。

ボストン郊外にあるラッセル・ビレッジは、
併設のラッセル・カレッジのキャンパスにあるシニア住宅。
年間450時間の講義を受けることが入居条件にもかかわらず、
開設後即満室。 今も140人以上が入居待ち状態という人気ぶりだ。

平均83歳の入居者は皆、驚くほど頭脳明晰で元気はつらつだ。
知的な楽しさは、寝たきり老人を生み出さない何よりの薬なのだ。

(本文より抜粋)

 

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