日本は人口減少社会と呼ばれ、2004年をピークに総人口が減少していくと予測されている。 ところが、高齢者人口(ここでは65歳以上の人口)は、2030年頃までは継続的に増加すると予測されている(図表1-1)。
したがって、シニア市場も今後確実に増大すると思われる。ただし、市場の中身は高度成長期ほど単純ではない。このため、シニアを対象としたビジネスは、おっとり刀で行くと火傷をする。
(出典) 2005年までは総務省統計局国勢調査」、2007年は総務省統計局「推計人口(年報)」、2010年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)中位推計」
出所:国勢調査、日本の将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)
一方、全人口に対する65歳以上人口の割合(高齢化率)は、急速に高まると予測されている。(図表1-2)。国立社会保障・人口問題研究所による日本の将来推計人口(平成18年12月推計、死亡中位推計)によれば、2030年には、65歳以上の高齢者人口が3,667万人で全人口の31.8%となる。一方、18歳から64歳までの生産年齢人口は、6,740万人で、全人口の58.5%となる。つまり、わずか58.5%の生産年齢人口が、31.8%もの高齢者を支える構造となる。こうした状態になる以前に社会保障制度の抜本的な改革が必要なのは言うまでもない。
現状の民主党政権の政策は、自民党・小泉政権以降の改革路線の逆で、国税を投入し、公的セクターの肥大化を進め、税収不足を国債発行で補おうとしてきた。しかし、格付け会社S&Pに国債の格付けを下げられ、カントリーリスクが高まったと評価されたため、これ以上の国債発行は困難となった。したがって、国税投入による公的セクターの拡大もこれ以上は無理である。消費税増税を企てているものの、国民の反感は根強く、容易に実現できるとは思えない。
こうした状況を鑑みると、今後どの政党が政権を取るにしても、現状公的セクターが担っている多くの分野を経営効率向上と税収拡大の観点から民間企業に移管せざるを得なくなるだろう。したがって、中長期的には、民間企業の活動領域が広がり、多くの市場分野で構造転換が起きていくと予想される。これは民間企業にとっては事業機会の増大を意味する。