団塊世代という名称は、堺屋太一氏が名づけ、著書がベストセラーとなって以来、そう呼ばれ続けてきた。年代当たりの人口が他の年代に比べて多いため、市場のボリュームゾーンと見なされてきたのだ。 しかし、経済成熟期の現代において、対象が団塊世代だというだけでは、市場のボリュームゾーンにはならない。 その理由は、高度成長期と現代とでは、「市場の性質」が大きく異なるからだ。
前述の通り、団塊世代に属する個人の消費行動は非常に「多様」であり、団塊市場とは、多様な価値観をもった人たちが形成する「多様なミクロ市場の集合体」である。これが高度成長期の団塊市場と大きく異なる点である。 モノが少ない高度成長期は、多くの人が、同じような収入レベルで、同じような社宅に住み、同じようなクルマに乗って、会社保有の同じような保養所に旅行に行く、という生活スタイルを送っていた。 このため、団塊市場は、あたかも「均質のマス・マーケット」のようだった。団塊世代と命名された時期には、その時代を象徴する言葉として的を射ていた。
ところが、広く一般化したこの言葉も、モノにあふれた現代には、もはや実態と合わなくなっている。もちろん、団塊世代と命名された1947年から49年生まれの人口の多い世代が、いまも存在するのは事実である。 しかし、他の世代に比べて人口が多いことと、その世代の人たちが似通った消費行動をとることとは、別のことだ。この点を混同してはいけない。
顧客を「ひとくくり」に扱う見方は、いわば高度成長期の産物である。そして、高度成長期に成功体験を持つがゆえに、その呪縛から脱出できない経営者も依然として多い。ところが、このような見方は、現代の多様性の強い団塊・シニア市場の性質に合わないのだ。
「多様性市場」である団塊・シニア市場で成功するためには、「年齢」「性別」「職業」「資産」といった従来型の市場セグメントではなく、ターゲット層に起きている変化によって、ターゲット層がどのような新たな「価値」を求めているのかを洞察し、その「価値」の違いによる新たなセグメントの再構築が重要である。
こちらをご覧ください