消費を促す5つの変化 - 若者にはない変化が需要の発生源

シニア特有の5つの変化を理解することが重要

消費は、対象者の何かが変化することで発生する。そして、シニア層には、若年層にはないシニア特有の変化がある。シニア特有の変化とは何で、なぜ、そうした変化が起こるのかの洞察がシニアの消費行動を正確に理解する上で重要である。

シニアの消費行動に大きく影響を及ぼすのは次の5つの変化である(図表5-1)。
第一に、「加齢による肉体の変化」。加齢に伴い、老眼になる、耳が遠くなる、ひざが痛くなる、物忘れしやすくなる、といった身体機能が低下する。こうした機能低下はシニアが消費する際の大きな意思決定要因となる。

図表5-1 シニアの消費行動に大きく影響を及ぼす5つの変化

第二に、「本人のライフステージの変化」。男性ならば、転勤、退職、再就職、大病、住宅ローンの完済、離婚など。女性ならば、これらに加えて子育て完了が重要要因となる。数年前に大騒ぎとなった「2007年問題」は、団塊世代の最年長者が60歳になり定年になるため、大量の退職者が見込まれ、大きな変化が起こると予想されたものだ。だが、実際は当初言われたほど大きな変化が起きなかった。この理由は、団塊世代の過半数を占める女性は大半がすでに仕事についておらず、一方男性も60歳を過ぎてもその多くが退職せずに仕事を続けているからである。

第三に、「家族のライフステージの変化」。子供の大学入学、卒業、結婚で、世帯の可処分所得は大きく変わる。また、本人が60代であれば80代から90代の両親をもつ人は多い。この両親が健在なのか、本人による介護が必要なのか、で本人の消費行動は大きく変わる。

団塊世代は人数が多いが、同じ消費行動をとるわけではない

第四に、「嗜好性の変化」。例えば団塊世代は「ビートルズ世代」「全共闘世代」と言われ、「思い出商品」「ノスタルジー消費」などど、この世代特有の嗜好性に訴求した売込みがなされる傾向が強い。だが、世代特有の嗜好性は、消費行動を決定する一要因に過ぎない。しかも、この嗜好性は生涯に渡り同じとは限らない。人の好みは時代と共に変化するからだ。この変化は、ライフステージの変化がもたらすこともあるし、内面的な成熟がもたらすこともある。

第五に、「時代性の変化」。これは、「流行の変化」や「生活環境の変化」といってもよい。数年前の韓流ブームのけん引役は、中高年女性である。

もちろん、以上の五つ以外にも消費行動に影響を及ぼす要因はある。だが、これらの五つに焦点を当てただけでも、シニアの消費行動の決定過程がきわめて多様であることがわかる。10代の若者と比べれば、その違いは明らかだ。このように、シニアの消費行動の意思決定に影響を及ぼす要因が極めて多様であるため、結果として消費行動も多様になる。